ものづくり王国・愛知

ものづくり提言受賞論文

21世紀愛知ものづくり提言の受賞論文

愛知県では、愛知のものづくりの真の実力を明らかにし、ものづくりの方向性の理論構築を目指すため、県内の企業経営者や関係機関向けに、世界のものづくりをリードしていく進化の方策を提言いただく研究論文を広く一般から募集いたしました。

6月下旬から11月15日まで公募しましたところ、25件の論文応募があり、このたび、有識者による選考委員会(委員長 髙橋 朗 株式会社デンソー相談役)により、新規性、独創性、実現性などを主たるポイントにご審査いただいた結果、次の受賞論文を決定いたしました。

[大賞]

◆愛知県の工業集積―「合体型」の構造と有効な産業政策―
名城大学経済学部 助教授  渋井(しぶい)康弘(やすひろ)

[奨励賞]

◆ものづくりの原点
財団法人日本立地センター理事  秋元(あきもと)耕一郎(こういちろう)
株式会社都市産業研究所代表  伊藤(いとう)清武(きよむ)

[奨励賞]

◆環境とものづくり立県愛知(自動車排ガス浄化の戦いから学ぶ)
相馬(そうま)隆雄(たかお) 

受賞いたしました提言研究論文につきましては、平成17年1月31日(月)に「愛知のものづくりDNAとその進化」と題したフォーラムを開催し、その中で賞状と奨励金を交付するとともに、パネルディスカッションを行い、内容について発表していただきました。

[フォーラム]

  1. テーマ 愛知のものづくりDNAとその進化
  2. 日時 平成17年1月31日(月)午後1時~午後3時30分
  3. 場所 アイリス愛知2階コスモス (名古屋市中区丸の内二丁目5番10号)
  4. 内容
    1. 基調講演
      「もの造り哲学」   東京大学大学院教授   藤本隆宏
    2. 賞状授与
    3. パネルディスカッション
      コーディネーター  中京大学大学院教授   水谷研治 
      パネラー      名古屋大学大学院助教授 山田基成 
      論文受賞者(大賞1名、奨励賞2名)

受賞論文

[大賞]
◆愛知県の工業集積―「合体型」の構造と有効な産業政策―
名城大学経済学部 助教授  渋井康弘
(要約)

愛知のものづくりにおいて、機械工業が果たす役割は大きい。そして、三河地域と尾張地域では、性格の異なる企業間関係が確認できる。三河地域は、自動車・部品関連の諸企業が階層構造を形成し、集中立地しているが、尾張地域は、自動車以外にも、機械、家電、介護機器、医療機器、食品加工機械等、様々な機械が生産され、大都市型の工業集積に近い構造が見て取れる。愛知県は、この両者の連携・補完による「合体型」の工業集積を形成しており、ハイブリット車や燃料電池車など、従来の自動車技術の上に様々な技術の融合を進めるのに有利な構造なのである。産業政策は、この構造の強みを生かすべきである。自動車技術と他の諸技術の融合を図ろうとする諸企業に交流・共同の場を提供し、異なる業種・技術の橋渡し役となることであり、それが真に新しいものを生みだしていく力となるはずである。

詳細(PDF形式 65.5KB)

[奨励賞]
◆ものづくりの原点
財団法人日本立地センター理事 秋元耕一郎
株式会社都市産業研究所代表  伊藤清武
(要約)

ものづくりの原点は、絶え間ない「工夫」である。機械工業を中心に明治以降の工夫と産業集積地形成のプロセスを愛知と東京、京都などと比較しながら追うことによって、愛知の工業集積の特徴を探り、将来への課題を展望する。愛知は、からくり人形や、尾張の縞木綿、瀬戸の窯業、西尾の鋳物などの伝統を引き継ぎ、多様なものづくりの技を潜在させ、産業集積システムを変化させ再構築して、環境変化に対応する産業集積を進化させてきた。県内各地が長い時間をかけ、固有の技術を磨き、工夫を重ね、多様な技術が地域に埋め込まれてきている。現在の自動車産業を中心とする高度な生産システムは、この多様な技術蓄積をベースに開花したとも言え、この持続とさらに新たなシステムの仕込みが必要である。そのためには、企業の開発力を強化しつつ産業集積の専門性、柔軟性を高めていくことが重要と考える。行政は、技術創出にチャレンジする舞台を整えるサポーターとして役割は大きい。

詳細(PDF形式 116KB) 図表(PDF形式 23.1KB)

[奨励賞]
◆環境とものづくり立県愛知(自動車排ガス浄化の戦いから学ぶ)
相馬隆雄
(要約)

愛知県では、自動車産業が栄え、その裾野に多くの部品産業、素材産業が形成されている。
この一つである排ガス浄化に関する製造業に注目し、愛知県の製造業の強みと今後の課題を検討した。1970年の自動車排ガス公害の問題が社会問題化した時、解決には、ハニカム、酸素センサー、3元触媒の最先端の材料技術が必要であり、愛知の企業が果たした役割は大きい。製造業における材料技術の重要性は、自動車産業だけの問題ではなく、浮沈の激しいIT産業においても、ほとんどの材料で世界の中で安定的にかつ圧倒的強さがあり、日本のIT産業を下支えしている。材料技術は、今や、高度に進化しており、ナノテクノロジーとして、原子、分子レベルに迫る展開をみせている。今後愛知県が目指すべきは、製造業の発展と環境保全の両立であり、新しい発電、エネルギー貯蔵等の新技術開発が重要であり、材料技術に強みのある愛知に環境ナノテクノロジープロジェクトの設立を提言する。

詳細(PDF形式 48.7KB) 図表(PDF形式 23.6KB)

講評

今回の論文応募点数が25件にのぼったこと、応募が愛知県内以外にも5都府県からあったことは、この企画が初めての試みであることや、テーマの難しさ、執筆に要する労力の大きさに鑑みると、十分評価できるものと考える。
応募論文の内容を大別すると、募集の趣旨に正面から取り組んだ総合的、本格的なものと、特定の分野に論点を絞ったやや専門的なものとに2分された。中には、アイデア提供に過ぎないものや、今回の募集の趣旨には必ずしもそぐわない論文も一部含まれてはいたが、示唆に富む分析や提案を含む労作が数多く見受けられた。
そうした中で、各選考委員の推薦論文を持ち寄った結果、7つの論文が賞の対象候補作として議論されることとなった。

まず、大賞であるが、選考委員の間で推薦候補論文は分かれた。しかしながら、議論を経ていく過程で、「愛知県の工業集積―「合体型」の構造と有効な産業政策」が、①尾張と三河の各地域の特徴を的確に捉え、これを合体型として将来の方向性を示した愛知に密着した論文であること、②自動車中心の産業構造を他の産業と連携させることで両者のシナジー効果を助成し各々の発展の強みとすべきとする視点に新鮮さがあること、等の点が評価され、最終的に委員全員の意見一致をみて選考された。

ついで、奨励賞の選考に入ったが、議論の結果、愛知の産業集積の変化を東京や大阪などと比較しながら、歴史的観点から詳細な分析を行っている「ものづくりの原点」と、自動車排ガス技術を題材にした独自の分析と環境ナノテクノロジーについての提言を掲げる「環境とものづくり立県愛知(自動車排ガス浄化の戦いから学ぶ)」の2論文が選定された。

このほか残念ながら選からは洩れたが、議論の対象となった他の論文も、入賞3作品に劣らぬ力作ぞろいであったことは、委員の間の共通認識であった。その一方で、全体的な傾向として論文前半の分析部分に比べ、後半の提言部分がやや弱いとの意見が委員の間からあったことを申し添えておく。
いずれにしても、これらの論文が「ものづくり愛知」を担う、産業界、学界、行政各分野の少しでも多くの関係者の目に留まり、地域産業の発展の一助となることを心から期待する。

選考委員長  髙橋 朗